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Nikon Sigma 特許戦争を技術的に検証する【後編】 [ニュース・雑感]

ニコンがシグマに対し、特許を侵害しているものとして、訴訟に踏み切りました。 ことの帰趨はどうなるのか、特許文献から推測してみたいと思います。

侵害の可能性

そもそもの問題は侵害しているのかどうか、という部分ですよね。 ニコンが主張する侵害については前編をご覧下さい。 APO120-300OS等の新しいレンズを除くと、多少でも該当の可能性があるレンズは次の通りです。 取り敢えずパテントを追ってみましょう。

  • APO 80-400/4.5-5.6EX DG OS (2005/08)
  • 18-200mm F3.5-6.3 DC OS /HSM (2007/06)
  • APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM (2008/04)
  • APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM (2008/05)
  • 18-125mm F3.8-5.6 DC OS HSM (2008/05)
  • 18-250mm F3.5-6.3 DC OS HSM (2009/04)
  • 18-50mm F2.8-4.5 DC OS HSM (2009/05)
  • 50-200mm F4-5.6 DC OS HSM (2009/05)
  • 70-300mm F4-5.6 DG OS (2009/09)
  • 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM (2009/12)
  • APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM (2010/03)
  • 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM (2010/06)
  • APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM (2010/07)

特許文献

特許文献
特許公開番号 製品 内容
2011-099964 APO70-200/2.8EX DG OS HSM 光軸と略垂直方向に偏心させて結像位置を変位する構成。フォーカス用レンズの結像倍率は不明であり、特許に全て当てはまるか不明
2011-039260 APO50-500DG OS HSM 光学系が特許とは無関係
2010-217838 70-300DG OS 光学系が特許とは無関係
2010-211102、2010-211056 18-50DC OS HSM 光学系が特許とは無関係
2010-197519 手振れ補正 光軸に略直交する方向に移動
2010-185893 手振れ補正 光軸に直交する。補正レンズの光軸に略直交する。 前記第1の方向と重ならない第2の方向に移動させる。 前記第1の方向及び前記第2の方向と重ならない第3の方向に移動させる。
2010-152247 50-200DC OS HSM 光学系が特許とは無関係
2010-152182 手振れ補正 前記光軸に略直交する方向に移動させる3つの駆動手段
2008-003361 手振れ補正 前記補正レンズを光軸に対して偏心移動が可能
2006-010887 手振れ補正 お互い垂直の関係にある第一方向と第二方向の駆動機構によって前記補正レンズを光軸中心に全方向に移動可能
2005-156893 手振れ補正 お互い垂直の関係にある第一方向と第二方向の駆動機構によって前記補正レンズを光軸中心に全方向に移動可能

侵害する製品は何か

APO70-200は新しいレンズなので除外するとして、比較的最近のレンズはいずれも光学系部分が該当しませんね。 つまり残る6本のレンズが怪しいのですが、古いレンズは手振れ補正の記載が無い場合もあり、よく分かりません。 また周波数の設定に関する特許の方で侵害しているかもしれませんが、これは判断出来ません。

ニコンが主張する侵害の一つは手振れ補正用のズームレンズの光学設計と、手振れの補正方向であると思われます。 ニコンによると、ほぼ垂直であることをクレームとして主張しているようですが、定義が曖昧です。 広義にとらえると、89.999…9 ~ 0.00…01°まで該当するのではないでしょうか。 仮に垂直方向で特許申請しているメーカーがあったとしても、工業製品である以上、誤差はつきものですから、ニコンから訴訟される可能性があるわけです。

シグマの特許を見ると、いずれもほぼ垂直とあります。 もし古いレンズで光学系がニコンの請求事項と一致していたら、致命的ですね。 しかしシグマの手振れ補正ユニットの特許を見ると、3方向に移動するというものがあります。 シグマの昔の出願は少ないことを踏まえると実はかなりグレーゾーンであり、特許抵触を避ける為に独自の手振れ補正ユニットを新規開発したとも考えられるわけです。

その根拠として古い出願に、垂直の関係にある第一方向と第二方向という記述がありますが、これはニコンのカタログにあるVRユニットの原理と酷似しています。 やはりニコンは、古い特許を持ち出してきたこともあって、シグマの古いレンズに対して訴訟する考えではないでしょうか。 勿論あくまでも特許ですから、実際に製品に採用されているのか、分かりません。

勝敗はどちらに?

ニコンは訴訟という手段に出ました。 誰だって裁判は避けたい筈です。 いきなり訴訟とは考え難く、最後通牒があって、シグマはニコンの通告を跳ね除けたと思われます。 ニコンにとって、シグマは完全なクロ。 しかしシグマとしては、シロないしグレーゾーンでしょうか。 或いはクロであるにも関わらず勝てる自信があるのかもしれません。

私の予想では、シグマが勝訴。 ニコンは敗訴するばかりでなく、特許を2件とも失うでしょう。 手振れ補正センサの制御方式は、手振れ補正ユニットと超音波モータの周波数を異なるものにして共振を避けたというもの。 ニコンは裁判に打って出たのですから、侵害しているという根拠を得ているものと思われます。 しかしシグマは、新規性・進歩性が無いものとして、特許の無効を主張。 手振れ補正ズームレンズの光学設計他も、先に挙げたように、クレームが曖昧で広範過ぎるとして無効とする判決が下されるのではないでしょうか。

ここで様々な可能性を挙げて、その内の一つが当たったからといって喜んでも仕方がありません。 従いまして一つに絞って原告側敗訴と推測したわけですが、ニコンはシグマがそのような行動に出ること位は予想している筈です。 何と言ってもニコンは技術立国日本の頭脳の中心のような存在ですからね。 そもそも裁判所がそのような判断を行う保障はありません。 事実は小説よりも奇なり。 ニコン・シグマともに、予想を覆すような裁判を展開してほしいものです。

そもそも判断は裁判所が下すもの。 自分で言うのも何ですが、ただのカメラ好きのおっさんがこんな記事を書くのは、おこがましいですね。

お互い垂直の関係にある第一方向と第二方向の駆動機構によって前記補正レンズを光軸中心に全方向に移動可能
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コメント 14

レイリー

難しい問題ですね。。。
どちらが勝訴しても後味が悪い事になるような気がします。
どちらも優れた技術のあるメーカーなので円満に解決する事を望みたいです。

by レイリー (2011-06-02 12:50) 

こうちゃん

えがみさんが書いているとおり、
ニコン側が訴訟を起こしているので、
これもCanon筋の話ですが、少なくとも
7割は勝訴の見込みがなければ、訴訟は起こさないよ。と
言っておりましたが、裁判も水もの。
どうなるか、わかりませんよね。
by こうちゃん (2011-06-02 13:12) 

MDISATOH

えがみさん今晩は!

ニコン、シグマどちらが勝訴してもユーザーには余り関係無い様に
思われるのですが・・・・ニコンは昔からのメーカーで私はメインユーザー
だし、片や性能の良いサードパーティレンズとしてのシグマはCPから
して素晴らしいメーカーだと思っています。何で喧嘩しなければならないの?と言うのはおかしいのでしょうか?

by MDISATOH (2011-06-02 17:40) 

えがみ

> レイリー さん
円満解決があるとすれば、シグマが和解に応じてニコンが訴訟を取り下げる、といった所でしょうか。
泥沼化したらそれこそ大変です…。


> こうちゃん さん
そうなんですよね。ニコンだってハイリスクハイリターンは避けたい筈です。
訴訟に至るまでの間、協議があったと思うのですが、何故かシグマは首を縦に振らなかった。

両社の特許文献の解釈の仕方の違いによるものなのかもしれませんが、お互い勝てる自信があるのでしょう。
以前、hi-lowさんが仰っていたように、垂直ではなく僅かにティルトさせていることで、"ほぼ"に含まれるか水掛け論になっているのかもしれません。


> MDISATOH さん
ニコン側からすれば必死で開発したものを、シグマがさしたる労なく使ったように見えるのかもしれません。
ここで示しをつけておかないと、世界の各メーカーがニコンの特許を勝手に使うようになるかもしれませんし…

少し前はNikon Zeiss ASML間の訴訟もありましたし(和解)、ビジネスの世界は過酷ですね。

by えがみ (2011-06-02 20:16) 

s_take

古いレンズが対象となると何故このタイミングなのか気になります。
手振れ補正のようなキーになる技術をここまで放って置く理由が解らないです。
by s_take (2011-06-02 21:21) 

hi-low

最近は知財の権利が重要視されているので、以前よりも特許権者が有利かなと思います。適当なところでの和解が一番ありそうな気がしますが・・・。
by hi-low (2011-06-02 21:48) 

INSULTER

>何故このタイミングなのか気になります。

このタイミングとは?
by INSULTER (2011-06-02 21:57) 

しばちゃん2cv

僕は、ニコンもシグマもすきだから・・・・・
by しばちゃん2cv (2011-06-02 22:00) 

ポロ&ダハ

えがみさん、こん**は。

>仰るようにレンズ設計で不利なニコンFマウントを無視するのは合理的です。<前編

某サードパーティ(タムロンとトキナーしかないか…(^^;; )の設計者も
「EFマウントだけで設計できていたら、もっと良いレンズが設計できてますよ」
と漏らしてましたけど、Fマウントってフランジバックが長いだけではなく
電気接点の設定が後玉の口径を小さくするようになっていますから、
設計する側から見ると凄まじいボトルネックみたいですね。
nikonが大昔に製造していた300mm/F2はあの小さなマウント口径にF2の
光束を無理矢理通したって感じですよね。

ところでCANONとnikonの特許は全くバッティングしないんでしょうか?

過去の訴訟ですとSIGMAは負け無しなので、今回も突っぱねちゃったとは
思いますけど、どうなりますかね。

SIGMAも万が一負けたら、潔くFマウントのレンズは製造中止にして、
(できればFマウントじゃマトモなレンズはできないって宣告して)
canonのEFマウントとSAマウント(αマウントはギリギリ?)ぐらいに限定
してテレセントリック性を確保した画面周辺まで超高解像度なレンズを
出して欲しいですね。
一つだけ気になると言えば、EFマウントならAPS-Cのイメージサークルに
対して十分なテレセントリック性を確保できるはずなのに、APS-Cモデル
ではEF-Sマウントにして後玉をnikonのように突き出させ、なおかつミラー
ボックスを小さくして、せっかくの光束がけられるようにしてしまっている
ことと、SAマウントでは口径がφ45mm(?)しかない為に、EFマウントほどの
テレセントリック性を確保できないのではないかということです。
デジタル専用に設定されたマウントで成功していると言えるフォーマットは
未だに出ていないという感じですから、早く決まってくれないですかね。

個人的には、大口径単焦点レンズや、短焦点領域でも手ブレ補正が効くこと
を考慮すると、SD1もボディー内手ブレ補正にして欲しいです。
by ポロ&ダハ (2011-06-03 00:29) 

ぱぱくま

勝算があっての訴訟なのでしょうけども、
どうなることやら見守りたいです。
by ぱぱくま (2011-06-03 00:44) 

penny

どっちが勝ってもどっちが負けても日本の企業。心配はしているものの、ちょっとだけワクワクしてしまうのは不謹慎なんでしょうか ^^;
by penny (2011-06-03 01:39) 

えがみ

> s_take さん
仰る通りそこは辻褄の合う説明が出来ません。
ニコンが気付かなかっただけのか、黙認していたが見逃せなくなってきたのか…


> hi-low さん
成程、和解の可能性は大きいですね。
長引く裁判は互いを疲弊させるだけですし、126億円はないと思いますが金額が少なければシグマも妥協するかもしれませんね。


> しばちゃん2cv さん
これがもし20年前だったら、シグマがなくてもタムロンがあるからいいか、と私は考えたと思いますが、今は事情が違いますね。


> ポロ&ダハ さん
私もNikonとCanonの特許は気になります。
如何せんCanonの出願件数はSigmaとは比較にならないくらい多いので、検索漏れや解釈の間違いで見当外れな記事になってしまわないかと思い(口は災いのもと)、素通りさせて頂いています。

前回も申し上げましたが、裁判の行方に関わらず、Fマウントのシェアを無視するリスクある行為をシグマがするかどうか。
仮にFマウントを考慮しない優れたレンズ設計にしても、ユーザーがその画質を認めてマウント変更orマウント追加してくれてFマウントのシェアの分だけ余分に売れないと、開発費の回収が出来ません。

ただ、50周年記念に因んで、EOSとSA用だけ超高性能レンズを出して様子を見るのは有りだと思いますね。

SD1はおそらく開発が完了していると思うので、ボディ内補正があるとしたらSD2やSD1xでしょうか。
しかしシグマは動画にも興味を持っているでしょうから、どうなるかまだ分かりませんよね。


> ぱぱくま さん
今後ともニュースからは目を離せません。


> penny さん
戦国時代、幕末…
それには及びませんが我々は今、歴史の証人なわけです。
心躍らないわけありませんよ(^^;
by えがみ (2011-06-03 20:34) 

グッドバランス

こんにちは~(^o^)

>そもそも判断は裁判所が下すもの。自分で言うのも何ですが、
>ただのカメラ好きのおっさんがこんな記事を書くのは、
>おこがましいですね。

実は裁判所さんも、結構、貴記事を参考にしてたりして(^^♪

まぁ、勝訴したほうには、“勝訴記念還元”のサプライズがあれば嬉しいなぁ。


by グッドバランス (2011-06-05 09:47) 

えがみ

> グッドバランス さん
特許クレーム部分の解釈が重要なので(単なる暗号文読解能力)、えがみとかいう奴は特許読む能力無いな、と思われているかもしれません…(汗
負けた側からすれば嬉しいものではないので、こっそりと報道するに留めておくべきでしょうか。

by えがみ (2011-06-05 19:11) 

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