Canon 画質を劣化させない像面位相差AFの特許 [半導体・エレクトロニクス技術]
キヤノンが像面位相差AFを用いても、画質が劣化しない撮像素子に関する特許を出願中です。 この技術なら、既存のレンズ資産の利用と高速AFを可能としつつも画質の劣化がほぼありませんから、後発であっても他社に負けないミラーレスを出せますね。

特許の実施形態
特許文献、及び要約・自己解釈
- 特許公開番号 2012-37777
- 公開日 2012.2.23
- 出願日 2010.8.9
- キヤノンの特許
- 像面位相差AFを組み込んだベイヤー型撮像素子
- 焦点検出用画素は、AFだけでなく、撮影用画素にも使える
- 2つの受光部を加算すれば、通常の画素として扱える
- 通常の画素
- 全瞳領域を受光する
- 焦点検出用画素
- 受光部に不純物(分離部と遮光部)を入れて、2つの受光部に分割する
- 不純物の組み込み位置を、マイクロレンズの光軸からずらす
- 受光部は、面積の狭い受光部と、面積の広い受光部になる
- 2つの受光部の中心は、マイクロレンズの光軸から偏位している
- 3種類の偏位量を用意し、製造誤差によって発生する光束のケラレを防ぐ
- 基本的に面積の狭い方の受光部を、焦点検出に用いる
- 焦点検出として対になる2つ画素は、斜め方向に隣接して配置される
- 対になる2つの画素と、別の2つの画素は、4画素おきに配置される
- 対になる2つの画素の焦点検出用受光部の面積を等しくする
- 特許の実施形態
- 静止画の撮影時は、OVFと位相差AFセンサーを用いる
- 動画の撮影時は、ミラーアップを行い、ライブビューと像面位相差AFを用いる
| 正面図 | RGGB | 側面図 |
|---|---|---|
![]() |
![]() |
![]() |
像面位相差AFの欠点
富士フイルムのF300EXRやニコンワン V1/J1で採用された像面位相差AFには欠点があります。 画素の一部を焦点検出に用いるので、いわばドット抜けのような現象が発生することです。 TVやPCの液晶モニタ等でドット抜けを経験した方も多いのではないでしょうか。
おそらく孤立点除去か何かのNRアルゴリズムで消しているでしょうから、F300EXRでクレームがあったという話は聞きません。 しかし、OLPFや透過ミラーと同じで、実用上問題の無い画質であったとしても、精神衛生上宜しくないですね。 それに、F300EXRやV1/J1が高画質であるという評価もありません。
キヤノンの特許はこの画質劣化を防ぐというものです。
撮影用と焦点検出用の兼用型画素
像面位相差AFは画素内の一部を遮光することで位相差を見れるようにしたものですが、この遮光された領域を使わない手はありません。 1つの画素を2つの副画素(受光部)に分離し、片方のみ使えば像面位相差AF用、両方使えば撮影用としたのです。
製造誤差
キヤノンが製造誤差について何度か言及しているのが気になりました。 APS-Cクラスの撮像素子の画素ピッチは4~7μm程度。 この領域内で、受光部を分割したり、遮光部を正確な位置に組み込むことは、かなり難しそうですね。 少しでもずれてしまえば信号値が変わり、像面位相差AFの精度に影響を与えるからです。 おそらく1台1台調整しているのでしょうけれど。
ところで動体撮影や動画中AFに秀でる筈のニコンワンですが、マウントアダプタFT1の使用時は肝心のAF-Cが使えないという制約があります。
AF-SであればコントラストAFを併用すれば精度に問題ないことや、 ピントにシビアなニコンワン用レンズはまだ無いことを考えると、 ニコンも同様の問題を抱えているのかもしれません。
エントリー層とEOSムービー
統計があるわけではありませんが、一眼レフを買ったけど、ライブビューしか使っていないという方も少なくありません。 ペンタックスがK-01を発売したことは、こうした背景を踏まえれば理に適っています。 ライブビューの問題は、一眼レフのメリットであった高速AFと省エネが意味を成さないことです。 残る一眼レフのメリットはレンズのラインナップしかなく、むしろ重量や大きさといったデメリットが目立ちます。
EOSムービーやシネマEOSも軌道に乗り始めたのか、かなり注目されています。 が、動画とライブビューは殆どイコールですから、上述したAFの問題が出てきます。 殆どMFしか使えないようであれば、初心者には敷居が高いということになり、ブームは消沈してしまいます。
ここで像面位相差AFが登場すれば、ライブビューや動画におけるAFの問題を解決出来ることになります。 αやNikon1で既に実現済みではあるものの、発表のタイミングやその内容次第では、話題を掻っ攫うことが可能ですね。
Facebook コメント
トラックバック 1
エンジニアの嗜み様が、キヤノンの像面位相差AFの特許情報を解説されています。...










たしかに僕も
動画は動作確認ぐらいしか使ったことは
ないですね、
やはりスチルカメラ世代というか、
カメラはカメラという感じなんですよね。
by こうちゃん (2012-03-21 10:00)
だんだん技術的に、また生産性も難しい感じになってきたように思えます。
ミラーレスは現状を見ているとまだまだ模索していて決定的な感じではないようにも思えます。
NikonのV1/J1が思ったほどの感じではないなと感じました。
動画は自分も「こんな事ができるんだ」と試してみただけで、全く使いませんね。
ライブビューも使用頻度は低いです。
現在のファインダーが無いコンデジからステップアップしてくるとファインダーで確認するのが億劫になるのかもしれませんね。
こうちゃんの仰る通りに私もカメラはカメラという感覚です。
by レイリー (2012-03-21 15:19)
記事にしていただきありがとうございます。
キヤノンはこの技術をレンズ交換可能な一眼レフカメラ用に考えているところが面白いですね。
小型の撮像素子で使われる技術だと思いますが次世代のEOSのシステムになり得るんでしょうか。
こちら↓は消していただいて結構です。特に何をしたというわけでもありませんので。恐縮です。
>この特許情報は404zさんにリクエスト頂きました。 有難うございました。
by 404z (2012-03-21 17:00)
CANONのミラーレスに採用されそうな技術なんですね。
ミラーレス機残りはCANON 決定打になるんですかね。
by ナビパ (2012-03-21 17:06)
ニコン1の撮像素子の構造が分からないため想像ですが、位相差検出素子は全くの抜けピクセルではなく、輝度情報の参照程度はしているかもしれませんね。
像面位相差検出AFでは、被写体が暗い場合と明るいために絞りが小さくなった場合にコントラストAF に移行します。FT1で取り付けられるFマウントレンズではその移行がスムーズではないため、AF-Cを不可にしているのかなと思います。万能のしくみは無いのでしょうね。
by hi-low (2012-03-21 21:44)
キヤノンがミラーレスを出したらきっとオシャレなんだろうなぁ
と、技術も楽しみですがデザインも楽しみだったりします。
by コリンママ (2012-03-22 08:25)
実施形態がミラーレス機では無いのがキヤノンらしいですね。
市販のムービーより使い勝手の良いミラーレス機になればヒット間違いなしでしょうね。
by s_take (2012-03-22 19:47)
位相式は、なかなか理解が難しい機構です。
理屈は、レンズの右側から入ったコントラストが中心にあれば合焦、右にあれば後ピン、左にあれば前ピンと判断できることです。これをレンズの裏側にあるセンサーではなく、像面の画素で行う話ですね。
画素面で行う、この特許は、やはりミラーレス用となるのでしょう。画素で行うと周辺光量対策が出来ないようで、レンズ側にテレセン光学を組み込むことになりそうです。この辺は、ニコンJ1と同じですね。
レンズにテレセン光学を組み込むと、イメージサークルを大きくできないので大型画素は無理と予想されます。キャノンも1インチサイズになるんでしょうか。
ちなみに左右または上下に二個のセンサーを配置するのは、ピント位置を知るためだそうですが、この理解は今後の課題です。
ところで、ビオゴンですが、ご承知の通り、その欠点は大きさだそうです。その性質上、最低でも全長が焦点距離の二倍、直径が焦点距離と同じ大きさになるそうです。(高野栄一著「レンズデザインガイド」写真工業出版社)
バックフォーカスが短く、28ミリでも50ミリより大きいのは、この性質のせいですが、ミラーレス全盛ともなれば、再び脚光を浴びる固定焦点タイプになるのではないでしょうか。
by 良吉 (2012-03-22 20:20)
> Mr. David Hong
안녕하십니까, David Hong씨.
코멘트 감사합니다.
by えがみ (2012-03-23 02:22)
> こうちゃん さん
そうなんです。
様々なユーザーを見ていると、好みが乖離しているんです。
> レイリー さん
一眼レフを一眼レフとして使うユーザー、一眼レフをコンデジ(ライブビューカメラ)やビデオとして使うユーザー、あらゆる層に売り込みたいメーカー。
様々な想いが錯誤を生じさせているのかもしれませんね。
> ナビパ さん
こける可能性だってあるのですよ。
キヤノンに限ってそれは有り得ないでしょうけど、
> hi-low さん
はい、突っ込みがあると思っていました。ニコンのアルゴまで情報を集めきれず…。
当Blogも私が思っている以上に有名になってしまったみたいで、不確定要素が多いまま、推測を交えて記事を書くことは控えた方が良いのかもしれません。
DCモータや超音波モータはコントラストAFに向きません。
ニコンは、使用可能ならその性能を保証するというスタンスですから、その通りだと思います。
by えがみ (2012-03-23 02:24)
> コリンママ さん
たまに、あれっ? と思うデザインがあるので、期待は禁物です。
> s_take さん
あくまでも例ですからね。
出願当時は一眼レフの機能の一つとして考えていたのかもしれません。
> 良吉 さん
射出瞳位置を像面から離すことが出来れば、Biogonタイプでもミラーレス機に使えると思いますが、設計の最適化を行うと、変形Biogonになってしまうような気がします。
レンズをそのままスケールアップすればイメージサークルを広くすることも出来ます。
単純なスケーリングだとシステム全体が大型化するだけなので、要はバランスですよね。
カメラの形式やフォーマットに正解は無いので予想は難しいです。
それぞれにメリット、デメリットがあり、他、経営理由、特許の抵触等、大人の事情があるわけですから。
by えがみ (2012-03-23 02:24)
> 404z さん
> 特に何をしたというわけでもありませんので。
いえ、ご提案頂いたことが嬉しかったのですよ。
Blogは「あーでもない、こーでもない」「こうした方が良いんじゃないか。」「いやいや、この方が…」という感じのコミュニティを望んでいました。
メーカーの方がここを見てくれるかもしれないことを密かに期待しつつ、ね。
しかしながら多忙なのでコメントの返信も素っ気無いものばかりになってしまい、私が一方的に情報を発信しているだけの気がしていました。
先の文は消しましたが、改めてお礼申し上げます。
by えがみ (2012-03-23 02:26)