Canon 14mm F2.8 ゴーストを抑制する特許 [光学技術全般]
キヤノンが2面の微細凸凹構造から成る反射防止膜によりゴーストを軽減する特許を出願中です。 実施例として14mm F2.8が検討されているので、かなり広い画角まで対応可能のようですね。

patent:14mm f/2.8

patent:bump surface
特許文献、及び要約・自己解釈
- 特許公開番号 2012-159720
- 公開日 2012.8.23
- 出願日 2011.2.1
- 実施例1
- 焦点距離 f=14.3mm
- Fno.=2.89
- 半画角 ω=56.5deg.
- レンズ構成 10群14枚
- UDガラス 1枚
- 実施例2
- 焦点距離 f=24.4mm
- Fno.=1.45
- 半画角 ω=41.4deg.
- レンズ構成 9群11枚
- UDガラス 1枚
- キヤノンの特許
- ゴーストの発生を抑制
- 微細凸凹構造の反射防止面を2面に有する
- ピッチは非周期
- 平均ピッチ300nm以上400nm以下
- 様々な入射光に対し、反射光を打ち消す干渉条件が維持される
- 2面とも凸凹の平均高さが異なる
- 2面の反射率の積は、0.001%以下 (入射角0度)
- 2面の反射率の積は、0.1%以下 (入射角60度)
- 2面の反射率の差の絶対値は、0.05%以上 (入射角0度)
- 2面の反射率の差の絶対値は、0.2%以上 (入射角60度)
- 反射防止膜はアルミニウムや酸化アルミニウム
| 入射角 | 0度 | 60度 |
|---|---|---|
| A面 | ![]() |
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| B面 | ![]() |
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| A面+B面 | ![]() |
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凸凹コーティング
ニコンのナノクリスタルやキヤノンのSWC(Subwavelength Structure Coating)といい、凸凹コーティングは最近の流行ですね。 今回の特許はもう一歩前進しており、両側に凸凹コーティングを、それもピッチの異なる膜を設けることで、様々な入射角に対応させたようです。 これは反射光を打ち消し、波長帯域特性や入射角特性に優れた反射防止膜になるようです。
逆光性能に関する特許における光学系は広角レンズ
実施例として挙げられているのは14mm F2.8です。 この近辺の画角でしかも単焦点だとニーズが限られていると思うのですが、 純正のEF14mm F2.8L II USM以外に、 Zeiss Distagon T* 15mm F2.8ZE や 韓国Samyang 14mm F2.8 ED AS IF UMC等、選択肢は豊富ですね。
モデルチェンジされたIII型を期待したいところですが、収差図が無いですし、これは早計というもの。 ニコンは基本設計の特許、逆光性能の特許と段階を踏んでいるようなので、キヤノンの今回の特許もその一環かもしれませんね。 Zeiss CP.2 T* Distagon 15mm T2.9もあることですし、Canon CN-E14mm T2.9 L Fくらいはあっても良いかもしれません。 【追記】…と思っていたらCN-E14mm T3.1が発表されました。
【追記】管状空間の反射防止膜
こちらもコーティングに関する特許で、同日に公開されました。
特許文献、及び要約・自己解釈
- 特許公開番号 2012-159721
- 公開日 2012.8.23
- 出願日 2011.2.1
- 屈折率の大きな光学レンズ
- 反射率が高い
- 透過光量が少なくなる
- ゴーストやフレア
- 干渉理論に基づいた反射防止膜
- 単層(シングルコート)
- 低屈折率材料のみを積層
- フッ化マグネシウムは蒸着法では最も低屈折率(n=1.38)
- 多層(マルチコート)
- 低屈折率材料と高屈折率材料を積層
- 低屈折率層の屈折率は可能な限り小さい方が良い(一例としてn=1.2~1.25)
- フッ化マグネシウムを用いると層数が多くなり、生産性やコストが不利
- キヤノンの特許
- 多層の反射防止膜
- 複数の微細な管状空間
- 管は平行に配列
- 管の径は光の波長よりも小さな400nm以下、2~50nm程度
- 回折限界以下の構造を平均としか認識しない
- 膜材料の屈折率は、膜材料と空気の平均屈折率となり、低屈折率である
- 膜材料と管の割合を調整することで、屈折率を調整する
- 管空間を膜材料で閉鎖することで、他の膜材料の浸入を防ぐ
- 表面に開口を持たない為、強度に優れる
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|---|---|
| 屈折率n=1.84の上に、一層目をアルミナ(Al2O3)、二層目をシリカ(SiO2)+管状空間とした。 | 横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%) |
グラフから反射率は0.3%以下と読み取ることが出来、かなり優秀です。
光は回折限界以下の構造をどう見なすか
こちらは光の性質を利用した反射防止膜の特許のようです。 構造が回折限界以下である場合、その平均値が認識されるので、回折限界以下で管(空気)と低屈折率材料を組み立てて、低屈折率材料単体よりも低い屈折率を実現するようです。
表面が凸凹ではないので、メンテナスもし易そうですね。















SWCとナノクリスタル(NC)は共にレンズ表面に微細構造を形成する技術ですが、SWCは屈折率変化でNCは干渉のコントロールと、目標が異なるところが面白いですね。NCは多層膜コートを発展させたものなので既存コートとの併用が容易ですが、SWCは原理が異なるので難しそうです。
by hi-low (2012-08-29 12:44)
反射防止コーティングとは位相のズレた反射光を作ると、反射光どうしが干渉し合って弱くなる原理なのですが、新しい反射防止は空気とガラスの屈折率差を山から谷へとを変化させたり、空気とガラス(?)を、ごちゃ混ぜにした低屈折層を作り緩慢にしたりして、反射光自体を減らす原理ですね。
今回のは、更に、相対する反射面の小さな突起の長さを変化させて、お互いの不足分を補おうとする目論見でしょうか。
凹面と凸面の向き合った部分は内面反射を増幅しゴーストやフレアーの原因となるので、この位置に施せば効果は絶大なはずですね。キャノンのEF50/1.2のアサヒ・ニューフェース診断でも、この部分の反射が多いようだと指摘を受けていました。14/2.8は曲率が大きいだけに更に効果も大きいと言えそうですね。
しかし、素人目に見るとレンズの結像に問題を生じないのか、また、突起や微細な物質の塗布がレンズの経年変化に影響しないのか、少し気になるところです。
by 良吉 (2012-08-29 18:50)
逆光撮影が多いのでこういう技術は嬉しいです。
by ナビパ (2012-08-29 19:59)
14mm、使うのが難しそうですが興味あります。
ナノクリに負けないものが欲しいなと思ってます。
by rappi (2012-08-29 21:00)
14ミリもモデルチェンジかと思ってしまいました。
超広角レンズのフレア・ゴーストの低減はありがたいですよね。
by ぱぱくま (2012-08-29 23:29)
> hi-low さん
各社一斉に凸凹構造を採用し始めましたね。
製品化済みだと優先度を下げてしまっていますが、ニコンのナノクリスタルの特許もじっくり調べてみたいと思っています。
> 良吉 さん
内面反射増幅に関する問題は、効果のあるコーティングはどの面なのか、ニコン等各種特許文献にも見られます。
仰る通り、互いの面同士で補い、低い方の反射率が有効になるようですね。
> ナビパ さん
逆光を避けていた昔が懐かしいです。
最近はどのレンズも意外に強いですからね。
> rappi さん
極端な超広角や超望遠は用途がピンポイント過ぎますからね。
このシーンをこのように撮りたい、という明確な目標がある方の為のレンズです。
> ぱぱくま さん
II型の発売は2007年ですから、少々早いものの、競争力を高める為にリニューアルしても良いのかもしれません。
by えがみ (2012-08-30 22:38)
追記されたキャノン特許の低屈折率層と言う考え方は、ニコンのナノクリスタルコートと同じものですね。クリスタルボールかガラス内の官状泡かの違いでしょうか。文中に耐久性について詳しく書いてあるところを見ると、SWCやナノクリスタルには問題が有りそうですね。
実は、キャノンのSWCをフードの植毛と同じくらいに考えて居たのですが、元は全く異なる原理です。植毛の方は、屈折や干渉でなく光のトラップ(罠)効果で反射光を防ぐものですね。つまり、植毛の間に入った光が徐々に減衰し、ついには無くなってしまうと言うわけです。
by 良吉 (2012-08-31 14:28)
植毛は、鏡筒内部が凸凹になったライトトラップと似たようなものですね。
仰る通り、ナノクリスタルもSWCもメンテナス性には難があるので、内部のみに用い、フロントエレメントは特開2012-159721の構造が良いのかもしれません。
by えがみ (2012-09-02 00:35)
追加された特許申請では、管状構造がコート内に平行配置されますが、ピッチの整数倍の波長で回折格子になってしまいそうですね。特許文献を調べていないので想像ですが、ランダム構造はナノクリスタルの特許の請求項にあるのかもしれません。
by hi-low (2012-09-02 11:28)
製造方法までは調べていませんが、ピッチの工夫によって回折光学素子を安価に作ることも可能かもしれませんね。
by えがみ (2012-09-04 00:33)