Tamron 300mm F2.8 フルサイズミラーレスの特許 [光学技術・レンズ設計]
タムロンがフルサイズミラーレスに対応した300mm F2.8の特許を出願中です。

patent: Tamron 300mm f/2.8 full-size mirror-less
特許文献、及び要約・自己解釈
- 特許公開番号 2012-242504
- 公開日 2012.12.10
- 出願日 2011.5.17
- 関連 2012-242505
- 実施例1
- 焦点距離 f=294.00mm
- Fno.=2.88
- 画角 2ω=9.3°
- レンズ構成 16群19枚
- 非球面 3面3枚
- 低分散ガラス(アッベ数 81.6) 3枚
- 低分散ガラス(アッベ数 70.4) 1枚
タムロン基準のLDガラスは、70以上なのか80以上なのか分からなかった
- 正負正負
- インナーフォーカス (第3群がフォーカス用)
- 手ぶれ補正 (第4群の中群が防振用)
- 第1レンズ群の内1枚を安価なガラスで形成してコストダウン
- 第2レンズ群を1枚で構成してコストダウン
大口径レンズがミラーレスに存在しないワケ
冒頭ではフルサイズミラーレス用と紹介しましたが、これはフランジバックやバックフォーカスの話ではなく、アクチュエータの話です。 一眼レフのライブビューでAFを行う時、レンズが小刻みに動くことを経験した方は多いかと思います。 ところがミラーレスのライブビューでAFを行うと、スムーズに動きますね。 これはアクチュエータの所為によるものです。
| 超音波モータ、DCモータ | ステッピングモータ | |
|---|---|---|
| トルク | 大きい | 小さい |
| 用途 | 位相差AF | コントラストAF(ウォブリング式)、位相差AF |
| 特徴 | 一眼レフで大きなレンズを動かすことに向いている | ミラーレス機で小さなレンズを動かすことに向いている |
ミラーレスに大口径レンズが存在しない理由は、ステッピングモータ(以下、STM)でAFを行うことが出来ないからのようです。 大口径レンズというよりは、単にフォーカス群の重いレンズですね。 コンタックスのMakro-Planar 100mm F2.8Nも、似た理由でMakro-Sonnar 100mm F2.8Nへ設計変更されました。 その気になれば巨大なSTMを積めば済む話ですが、売れなくなってしまうでしょう。
STMに不向きなレンズが全く存在しないわけではありません。 具体例としては、 G20mm F1.7、GXR33mm F2.5 Macro、XF35mm F1.4R、DP2M 30mm F2.8、RX1 35mm F2 等です(他にもあるでしょうが、直ぐに思い付いたということで)。
どのレンズにも共通して言えることは、けたたましい音でAFが行われ、品位に欠けること。 上記レンズを使った時、超音波モータでない一眼レフ用AFレンズを思い出した方も多いのではないでしょうか。 更に共通して言えることは、殆どはレンズ構成が美しく、メーカーが写りの良さを謳っていて、実際に画像が良く、ユーザーもそれを認めていることです。
それがメーカーの狙いでしょう。 コントラストAFには不向きな遅いレンズであり、動画にも使えませんが、ユーザー全員がAF速度と動画を求めているわけではありません。 いわばメーカーの意図は、静止物を高画質で収めることをピンポイントで狙ったのだと思います。 但しAF速度を求める声は小さくないようで、パナソニック25mm F1.4のようにAF速度と画質のバランスを重視したレンズが増えてくる気がしますね。 これをフルサイズで作れば直径2倍の大きさになるので、フルサイズミラーレスは待ち望まれているとは思いますが、重量バランスを考えると、一眼レフの筐体に、バックフォーカスを縮めた設計がベストでしょう。
タムロンの特許
タムロンの特許は、サンニッパをSTMで動かせるくらいに、フォーカス群を軽量化するというもの。 最近なら像面位相差AFが普及し始めたので、超音波モータを使うことで対応可能でしょうが、軽いフォーカス群は超音波モータでも効果があるので、出願は無駄ではないですね。
性能

左から、球面収差、非点収差、歪曲、倍率色収差
性能は、MTFグラフの線が上辺に貼り付いたものになりそうですね。 一般的な単焦点よりも性能の桁が一桁違い、球面収差や非点収差が±0.02mm以内、倍率色収差が-0.002mm以内程度です。 歪曲は少し多めで+1%の糸巻型のようです。 サンニッパとしては当たり前の性能ですが、換言すれば、収差等の性能だけなら純正もサードパーティーも変わらないということですね。
戦略と戦術に長けたタムロン
ここでいう戦略とは、いつどのような製品を市場に投入するかということ。 戦術とは製品コンセプトやその良し悪し。 賛否両論あるでしょうか私はこのように考えています。
その2つ以上に重要なのが兵站で、これは開発リソースを使い分け、新製品や新技術を定期的に投入する術や、部品を調達して製品を必要数作って出荷する術です。 大人の事情もあるでしょうから、メーカーの報道資料から兵站事情を読み解くのは難しいです。
戦略と戦術両方の成功例は、タムロン24-70/2.8VCやシグマ35/1.4でしょう。 最新型フルサイズ機の登場でフルサイズ用レンズに対する注目が集まっていましたし、製品の性能もそれに見合うものでしたからね。 失敗例はGH3です。 製品そのものが優れていたので、多数の予約を取り付け、戦術的には快挙です。 ところが需要を読み切れず、販売機会を損失してしまったという戦略的ミスがあります。
思えばタムロンは18-270mm VCや70-300mm VC、18-200mm DiIII等といい、製品の投入タイミングが巧みですよね。 300mm F2.8はフルサイズは勿論のこと、APS-C中上級機とも相性良さそうですね。 そこそこニッチなレンズなので、販売時期によらず一定数売れるでしょうけど。
冒頭ではフルサイズミラーレス用と紹介しましたが、ボディの存在やサンニッパの用途からEVFは不向きであることを考えると、時期が早いですね。 超音波モータを搭載して一眼レフ用にするのがベストな戦術でしょうが、敢えてSTMを採用し、像面位相差AFでない一眼レフのライブビューでも高速なAFを実現し出来たら面白そうですね。







ミラーレス用の大口径望遠というとパナソニックが開発中の150mm/F2.8が連想されますが、あちらは300mmの半分ですからあまり問題にならないんでしょうかね。
“サンニッパ相当”と言うためにはフォーカスも相応に速くなければならないでしょうけど……
by FT (2012-12-19 23:10)
> FT さん
あくまで開発発表なので同じ問題で苦労している可能性はあります。
仰る通り単純計算で300mmの半分の労力で済むと思いますが、もしμ4/3が狭い画素ピッチの分だけ高精度に制御しているとすれば、私の想像ですが、別の問題が生じるかもしれません。
数年前のレンズですが、100-300/5.6辺りを見てしまうと、一眼レフのサンニッパには程遠いと感じてしまいます。
私はまだ実物を見ていないのですが、35-100/2.8が判断材料になると思います。
by えがみ (2012-12-21 01:31)